
Report:『SONAR』 森山未來、ヨン・フィリップ・ファウストロム、及川潤耶 Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2018
『SONAR』は、森山とファウストロムが振付・出演し、及川潤耶が音楽を手がけた、ダンスパフォーマンス作品だ。公演を見終わった後だと、ダンスパフォーマンスという表現がふさわしいのか甚だ心もとない。ダンスを主体に見せる公演であるは確かだが、もっとこのパフォーマンスにふさわしい言葉があるのではないだろうか。帰路、同行者に「インスタレーションみたいな公演だったね」と話している人がいて、なるほどそれも一理あるなと思った。 そもそも「SONAR」とは、超音波を意味し、“水中を伝播する音波によって、水中や水底の物体に関する情報を得る水中音波探知機”をさすこともあるそうだ。クジラは「SONAR」を使い数キロ先の相手ともコミュニケーションが取れ、お互いの距離感をつかみながら回遊できるそうだ。同時に、船から出ている「SONAR」のせいで迷い込んで(沖に)打ち上げられることもあるという。森山は、「日本とノルウェーの共通点を考えていく中で、捕鯨文化に思い至った」とあるインタビューで語っている。『SONAR』は、そんな「言語を飛び越えたコミュニケーション」をテーマにした作品だ。 上演時間は約60分。あえて前情報を入れずに会場に足を運んだため、入場の際、「オールスタンディングです」と言われた際には自分の体力に少し不安を覚えた。 会場となるホールのドアが開かれたのは開演の数分前だった。どこが正面かはわからない。どこでどんな風に始まるのだろうか。観客はがらんとした会場に、所在なげに佇むしかなく、自然にホールのセンターへと集まる。しかし、すでにこの公演を見ているのであろう一部の観客は迷いなく確固たる立ち位置を決めているようだ。



text by 長谷川あや
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